暦の上では春になっていたが、まだ寒い日が続いていた時のことだった。
八頭身は1さんの家の前で待っていた。しかも外は雪がしんしんと降り積もっていた。
こういうことは日常茶飯事だった。しかし、八頭身は苦痛ではなかった。むしろ1さんに会える喜びが大きかったので寒さなぞ平気なはずだった…ついさっきまでは。
2時間経過した。向こうから1さんの姿がおぼろげに見えた。だいぶ待っていたため、八頭身の半分以上が雪に積もっていた。
(1さんだ…待ったかいがあった…ああ、こっちを見ている…)
ささやかな幸福に浸っている時、1さんが八頭身の元に近づき、こう言い放った。
「八頭身…風邪引くなよ…何とかは風邪引かないっていうけど」
1さんはそのまま家に入ってしまった。
「…」
八頭身はその場に立ち尽くしていた。

ある日、八頭身は体の不調を訴えていた。
「おかしい…頭がガンガンするし、体も熱い…そうだ、博士に見てもらおう…」
八頭身は、博士のいる『モナー研究所』に向かった。
「どうしたんだね!一体!」
「はあ、氷のうは沸騰するし、へそで茶は沸かせるし…なんか変です」
「呑気なことを言っている場合か!早く、ベッドに寝たまえ!」
博士は慌てて、八頭身をベッドに寝かせた。

博士は顕微鏡をのぞいていた。
「おかしい…こんな菌は見たことはない…」
博士が顔を上げたとき、何か焦げ臭いにおいがした。
「?!」
八頭身のいる病室に向かうと、なんと布団から煙を上げていた。
「!!」

その頃、1さんはおにぎり君と一緒に歩いていた。
「どうしたの、1さん?」
1さんがボーっとしているので、おにぎり君が心配そうな顔をして聞いた。
「いや、別に…」
このとき、1さんは雪に埋もれていた八頭身が頭によぎった。
「なんでもないよ…あ、あれは、博士の研究所の方だ」
2人が研究所の方に駆けつけると、なんと『モナー研究所』が燃えていた。
「これは一体…どういうことだ?」
燃え盛る火の中から博士が慌てて飛び出した。
「た、大変だ!は、は、八頭身が!」
「博士、どうしたんですか?何があったんです?」
博士は震える指で向こうを指していた。その先には真っ赤に焼け爛れた何かがこっちに向かっていた。
「…は、八頭身?」
1さんがそう聞いたとき、八頭身はまったく別人のような表情でこう言った。
「オマエハ…ダレダ?!」
「八頭身!」