「八頭身温泉」その2

刃物を向ける八頭身。

「アヒャ、アヒャヒャ…」
八頭身は不気味な笑い声を上げていた。何処から持ち出したのか刃物を構えていた。
「逃げろ!」
誰の声か分からないが、それを引き金に1さん、おにぎり君、博士は蜘蛛の子を散らすように逃げた。

(ハア、ハア…あ、脚が動かないよ)
やみくもに走っていたので1さんはだいぶ疲れ果てていた。
ドオッ
1さんは突然前のめりに倒れた。
「…!」
「アヒャヒャヒャ」
後ろには八頭身が待ち構えていた。

焼きおにぎりにされたおにぎり君。

ガシッ
もう駄目だと思ったその時だった。1さんは恐る恐る顔を上げた。
「お、おにぎり君!」
おにぎり君は1さんを庇うかのように八頭身が振り下ろした刃物を真剣白刃取りで受け止めていた。
「わ、ワショーイ!1さんは僕が守る!」

「アヒャヒャ、ジャマダ、コメヤロウ…」
そんなおにぎり君をあざ笑うかのように八頭身は目からビームを発射した。
ビー
ドオッ
「ああ!おにぎり君が焼きおにぎりに!」
おにぎり君はこんがり美味しいきつね色になって、倒れていた。
「お、おいしそう?ワ、ワショーイ…?」
「呑気なこといっている場合か!1さんを追いかけているぞ!」
博士はおにぎり君を引きずるように、八頭身の後を追った。

お前なんか大嫌いだ!

1さんは無我夢中で走っていた。だが、それも限界に達していた。
(も、もう、あ、脚が動かない…)
気がつくと目の前には絶壁の崖があった。

「アヒャヒャ」
1さんは観念するように地面に横たわった。このとき涙が溢れていた。
(八頭身、もう、僕の名前を呼んでくれないのか…)
焼け爛れた八頭身の手は1さんの首根っこを押さえていた。痛かった。
「アヒャヒャヒャ」
八頭身はそんな1さんにも目もくれず、刃物を1さんの顔に振り下ろそうとしていた。
悔しさと悲しさが入り混じっていた。そして、だんだん、怒りが込み上げてきた。
「…」
「八頭身、お前なんか、お前なんか、大嫌いだーーーッ!!」

おにぎり君の体当たり。

「うわーーーっ!」
1さんの言葉に反応するかのように八頭身は突然、苦しみだした。
(は、八頭身?)
八頭身は頭を押さえて、刃物を落とした。
「は、八頭身?」
1さんが八頭身の傍に寄ろうとしたその時だった。

「だーーーーーっ!!」
おにぎり君が斜め後ろから八頭身のわき腹をえぐるように体当たりしてきたのだ。
ドーーーーン!
「うわーーーーっ!」
体当たりされた八頭身は、絶壁の崖に転落した。
「は、ハットウシーン!!」
1さんの絶叫がこだました。

「1さん、大丈夫…?」
おにぎり君が1さんの傍に寄ったとき、1さんはものすごい形相でおにぎり君を殴った。
ボコッ!
「なんて事をしてくれたんだ!」
1さんの拳は震えていた。


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